インターネットガバナンス・タスクフォース Internet Governance Task Force of Japan

ソウルシンポジウム速報(10月28日)

International Symposium on Public Participation in Internet Governance
October 26, 2004, Seoul, Korea

10月26日、ソウルで、上記国際シンポジウムが開催されました。これは、8月にNIDA(Nadtional Internet Development Agency)という政府機関になった旧KRNICが主催したもので、WSISとICANNのAtLargeを中心に、インターネット・ガバナンスへの市民参加のあり方を主なテーマとして開かれたものです。筆者も招かれて参加しましたので、以下にその概要を報告します。

最初に基調講演として、ハーバード大学バークマンセンターのジョン・パルフリー所長が
"The Quandary of Public Participation in Internet Governance" と題して、インターネットガバナンス全般の課題として、市民参加を中心に講演しました。
 とくにICANNをとりあげ、「広くいえば、ICANNでの市民参加をめざすこれまでの実験は自身の設定した目標に達せず、失敗した」と総括、「世界各地で開催される会議に直接参加できる市民は限られ、それに代わる方法である、フォーラム(メーリングリスト)経由での参加について分析したが、ICANNはその意思決定に際して、市民の声を聞いているとは認められなかった」と結論づけました。彼は、DNSOのアーカイブにある約10万通のメッセージを、Perlスクリプトを使って、解析し、gTLDの新設、.orgの管理者変更、ICANNの組織変更(「リン改革」、べりサインのWLSサービス提案の事例について、寄せられた意見とICANNの意思決定の間の関係を分析し、いずれにも、ICANNの決定にネット上の意見はほとんど反映されていないことを、数値的に証明したものです。

 次に、本来なら、オックスフォード大学のクリチャン・アーラート研究員による講演が予定されていたのですが、彼は体調が良くなかったようで欠席、そのまま、主催者である、NIDA(National Internet Development Agency)の長官、旧KRNICのソン理事長の主催者挨拶のスピーチが行われ、昼食となりました。

 午後は2部に分かれ、合計6人のスピーチが行われました。残念ながら、午前は100名ほどいた参加者は、午後には20名強と、大きく減り、その多くは学生だったようです。NIDA/KRNICの宣伝がいきわたらなかったこと、インターネットガバナンスへの関心が低いこと、などがその原因でしょう。少々気が抜けたのは、事実です。

 午後の部の最初は、私の番で、「WSISとAtLarge」というテーマを与えられたので、WSISの経緯、インターネットガバナンスの問題点、それぞれの主張、AtLargeの経緯などを説明し、ネティズン参加を組み込んだガバナンスが重要ということを主張しました。
 次に、中国のシュウ・ホン香港大学教授(ICANN ALAC委員)が、デジタルデバイドについてスピーチ、続いて韓国・ソウル大学のカン・ミョンクー教授がインターネットガバナンスと市民社会について、ICANNの経験に始まり、WSIS、さらに韓国国内のインターネットガバナンスについて議論し、最近のNIDAの設立による政府介入は中国モデルに近く、法律的にも市民参加が考慮されてなく、好ましくないと批判しました。なお彼は、海外の事例として、カナダ、オーストラリア、日本のccTLDの管理のあり方を紹介し、非営利のJPNICから民間営利企業のJPRSへの.jpの移管について、その意思決定への参加は会費を払っているJPNICメンバーに限られ、民主的で多様な参加は実現できてないと述べました。残念ながら質疑の時間がなかったので、この点について意見を言うことはできませんでした。
 第2部は、APNGの活動を紹介する、ICANN ALAC委員で、APNG議長でもある松本敏文さんのスピーチで始まり、中国から、インターネットユーザー組織の事例として、AtLarge@Chinaの活動紹介を、AtLarge@Chinaリー・フー副会長が、最後に、韓国、NIDAのユー・ジーユル国際部長からインターネットガバナンスとAtLargeについて、それぞれスピーチがありました。
 討論時間が設定されてなくて、その点でも物足りない会議でした。

 なお、韓国は、8月1日に、KRNICが、NIDA傘下の政府組織として吸収され、ccTLDの管理は政府が全面的に行うことになったのです。NIDAは、現在のところ、事実上KRNICが改名したもの、という組織ですが、11月1日に、さらに組織改正が予定されているようで、その詳細は明らかにされていません。
 で、なぜこの時期にそのNIDA/KRNICが「市民参加」をテーマに国際シンポジウムを開いたのか、いろいろ聞いたのですが、その意図は不明のままでした。
 企画そのものは、5月にスタートし、そのときから、このテーマ設定でした。AtLargeへの参加を促進したいというKRNICの意図はあるようです。さらにいえば、政府の介入強化への、抵抗のジェスチャーなのかもしれません。政府=情報通信部以外は、だれもNIDAへのKRNICの吸収を歓迎していない、というコメントがNIDAの当事者からも個人的にですが、発せられていました。
 なお、翌27日は、APNGのICANN AtLarge関係者による会合が開かれ、地域組織RALOの設立準備の相談が行われました。また、NIDAを訪問して、IGTFについて紹介し、意見交換をしました。

(文責:会津泉)